先生もビックリ

肌を美しくする効果

長野県・明科町白坂地区といえば、杏で有名な安曇野に近い山間の村である。標高が高いため、気温は平地より数度は低い印象を受ける。彼方に北アルプスの連山をのぞみ、付近を歩けば肺の中が一気に洗濯される様子が実感されるほどに、空気が澄んでいる。春になると梅・桜・桃の花がいっせいに咲き誇り、アマチュアカメラマンでにぎわいを見せるそうだ。ここに長さ2000メートルあまりの旧国鉄トンネル跡がある。女子大学院生のいうヤマブシタケは、このトンネルの中で栽培されていた。トンネルの入り日から約2000メートルに渡って、両サイドにキノコを並べるためのスチ―ル製の棚が設けられている。棚の上にズラリと並べられた器から白い入道雲を思わせるようなキノコが顔をのぞかせているさまは壮観である。これがヤマプシタヶだ。なかには、竹筒に入れた培地に種菌を植えたらしく、太い竹の側面に開けられた小さな穴から顔をのぞかせているオブジェのようなキノコもある。青竹のグリーンとヤマブシタケの白とのコントラストが実に鮮やかだ。ここは松本市郊外に本拠を置く「国際薬効きのこ研究会」の、キノコ栽培場だ。トンネル内や、入り口に建てられたプレハプの作業場で20名あまりの中高年の女性が働いている。近郊に住んでいる現地の女性たちだ。モンペ姿にお揃いの赤いエプロンをつけ、プラスティック製の籠に入れたヤマブシタケを抱えて、忙しそうにトンネルを出入りしている。

 

ヤマブシタケとは?

その働く姿が実にイキイキしていて、見ているだけでこちらもなんだか元気の素を与えられるような気がしてくる。私は職業がら、つい女性の肌の様子に目がいってしまう。たとえば、電車に乗っていても向かいのシートに座っている女性の肌艶を観察するだけで、その人の生活ぶりが想像できるところがある。ここで働く女性たちについていえば、みんな驚くほどに肌に張りがあリスベスベしている。色の白い人、浅黒い人と肌の色こそさまざまだが、みずみずしい肌の持ち主が揃っている。よほど健康的な日々を送ってきたに違いない。都心の中高年の女性にはあまり見られないような健康美あふれる肌である。神田にある私のクリニックを訪れた大学院生が、「トンネルの跡地で働いているおばさんたちの肌の美しさをご覧になったら、先生もビックリされるんじゃないですか」そう言っていたのは、事実である。国際薬効きのこ研究会を主宰する彼に紹介されて、働く女性たちに話を聞くことができた。そして彼女たちは、自分たちが栽培しているヤマブシタケをしょっちゅう口にしていることを知った。「ヤマブシタヶを食べると、便秘がすぐに治る」「娘に食べさせたら、乾燥肌が治ったって言ってましたよ」「うちの孫はニキビが治ったんだ」「お化粧ののりがよくなるよ」「ほら、いくつになっても肌がスベスベしてるでしょ」私が肌の状態について質問すると、多少照れながらもうれしそうに話してくれた。やはリヤマブシタケは、肌を美しくする効果があるのだろうか?


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